レブロンは奇跡を起こせない

2007年のファイナル、スパーズの完全マークにあってスイープでの敗北を喫した。"KING"、"選ばれし者"、いいだけ祭り上げられてきた若き天才プレーヤーは、完膚なきまでにやられた。

本当は出来ることなら生涯1チームのフランチャイズプレーヤーとなることに、どれほど憧れていただろう。そのてのロイヤリティを大切に思うタイプなのに。だけど彼はそれを諦めた。移籍を決断した。

故郷を捨てる裏切者の汚名を背負って移ったマイアミで、1シーズン目からファイナルに進んだものの、最後の最後で調子を振るえず優勝をマブスに献上することになった。彼の移籍を逃げだと断じていたアンチの人たちはここぞとばかりに彼の失敗を喧伝し揶揄した。

だけど次の年、痙攣する脚を引きずり、彼はシュートを決め、とうとう優勝トロフィーを手にしたのだ。一度、驚いたように目を見開いてトロフィーを眺め、愛おしい赤ん坊を抱き締めるように大切に腕の中にトロフィーを収めた。

移籍3年目、連覇のかかるシーズンのファイナル6戦だけは幸運が味方したと言えるかもしれない。残り数秒、ビハインドで迎えた崖っぷちの試合でレイ・アレンが同点の3ptを沈め延長戦に持ち込んだ。延長から6戦をもぎ取り、続く第7戦を制して、2連覇を達成させた。でもこれは奇跡ではなかった。十分にあり得る勝利の結果だった。

4年目は3ピートが期待された。ヒートは十分に強いチームではあった。それでもファイナル、対戦相手のスパーズは流れるような芸術的に完成されたパス回しでヒートを圧倒し、優勝を攫っていった。

だから、「満を持して」というよりは、レブロンはあまり残り時間がないことを意識したんじゃないかと思う。今度こそ故郷クリーブランドに優勝トロフィーを。自分がまだ全盛期のプレイをできるうちに。離れて5年目にして古巣キャバリアーズに戻ってきた。

そして復帰1年目、当然のようにプレーオフへ進出したものの、主要選手に怪我の続出する中、苦労して勝ち進んだファイナルでは、今一歩が及ばず2-4で優勝を逃した。

勝てる時は勝つし、負ける時は負ける。

存在自体が稀有だというのはともかく、彼は今まで決して奇跡は起こして来なかった。不可能なこともある。みっともない姿を晒すこともある。何もかもを手に入れてきたわけではなく、掴めるものを一生懸命獲得してきた。

そしてこの第6戦も、何一つ奇跡ではなく、彼は彼らしいプレイと判断と采配と努力で勝利を摑んだのだ。

もっとも素敵な2 words、"GAME 7"にとうとう辿りついた。

GAME 7も何も約束されてはいない。奇跡は起きない。起きなくていい。ただ、キャブスに最高のプレイをして欲しい。

そして優勝したい。ここまで来たんだ。優勝したい!