ハルヴァ

今読んでいた本にハルヴァというお菓子の話が出てきた。

著者も人生で2度しか出会っていない幻の、そして天上的な美味しさのものだったらしい。俄然食べてみたいじゃない?

著者が子供の頃「点子ちゃんとアントン」にでてきたトルコ蜜飴というのを食べてみたいと思っていたら、比較的すぐプラハの駄菓子屋でそれに出会って食べられたらしい。ヌガーをもっとサクサクさせて、ナッツ類を多くした感じ、並のキャンディやチョコレートは目じゃない美味しさだったんだそうだ。

しかし、友達のロシア人が「これだったらハルヴァは百倍美味しいわ」と言い出す。後で実際モスクワで買ってきてくれたんだけど、それが確かに絶品! ただあまり手に入らないもので、その時はクラスメイトみんなに1口ずつでおしまいだったらしい。

当然ながらもう一度食べたい。もっと食べたい。ところがモスクワへ父親が出張する度に探して貰うのに見つからなかった。どうもロシアのものというよりアラブ圏のものらしいこともわかり、大人になって、ずっと自分も各地で目を光らせていたものの、あの時ほど美味しいハルヴァには出会えない。もう記憶の中で美化されているだけかもとも思うようになっていた頃に、知人がアテネでハルヴァって書いてあるお菓子見つけたよと買ってきてくれたのが思い出のハルヴァの味!

結局イランが発祥で、前5世紀から伝わるお菓子らしい。美味しいから各国各地に様々な形で伝わっているのではないかと。で、材料はありふれているものの、口伝でしか伝わらなかった製法が特別なハルヴァ職人らの秘伝であり、また機械では再現不能っぽい。職人の手で作られているのは今やイラン・アフガニスタン・トルコだけ(典拠は2001年刊の本より)。そんなわけで本物には巡り会うのが奇跡みたいに難しいらしい。

ハルヴァは、トルコ蜜飴とヌガーと求肥落雁とポルボロン、そういうお菓子の系譜の元であって、もっと美味しいもの…という。どうも材料と様子から、インドの伝統的なアイスとして食べたことのあるアレ(名前は忘れた。ハルーア?)や、イタリアのカッサータ(大好き!)もハルヴァを真似ようとしたものじゃないかと思われる。私はそれ、すごく好きな予感がするよ!!

ところでこのトルコ蜜飴という邦訳がどうも薄々そうじゃないの?と思ったら、やっぱり英語ではターキッシュ・デライトらしい。

ターキッシュ・デライトと言えばナルニア国物語のなかで悪い魔女に唆されて兄弟を裏切ることになるエドモンドが、魔女に誘惑される決め手が「好きなだけターキッシュ・デライトが食べられる」だった。子ども心に、じゃあそれはどれだけ美味しいの!? と思うよね?

ところが、私が食べたことのあるターキッシュ・デライトはベタ甘くてバラの香料なんかが入っていて、よく日本ではお彼岸なんかに出てくる寒天みたいなゼリーみたいな菓子があるじゃん? ひたすら甘いヤツ。あれに似た感じで、私としては「うえぇ〜」みたいな代物だった。どうせ戦時中の子どもは甘けりゃいいんだ……とがっかり納得したものだけど、もしかしたら根本的に間違っていたかもしれない。

ハルヴァみたいなものだったのかも!?