年のせいかトキメけず。

久しぶりの舞台エリザベートを観ました!
舞台美術がだいぶんと様変わりしていて、あの、大きな固定の枠を置いて舞台の中央だけを狭く使うのが最近の主流なんでしょうか? 平面を広く使って、横手で同時進行で主役じゃないモブが勝手に小芝居しているのを見るのが、私は結構好きだったんですけど……。
オープニングのダンスがわりと面白いことになっていたので期待したんだけど、中盤の演技と絡めたダンスシーンはそんなに好みじゃなくて、これだったら山口・武田ダブルキャストの頃の演出が好きだったなーと懐古気分に。でも今回のトートダンサーズはすごくレベルが高い気がしました。シシィがギリシャに隠遁している時、バックでモダンバレエみたいなことをしている時の静止っぷりが本当に微動だにしないのです!
今回、井上トートだったのですが、歌は流石に上手くていいと思うんだけど、どうもこちらを脅かしてくるような魅力に欠けたというか、私がもうお年を召したせいでときめきを失っているのか、はたまた2階から見下ろして観ていたから圧倒されなかったのか、ともかく「んッ・きゃーっ!! トート様ぁ!」な気分になれなくて駄目でした。
やはりエリザベートでは、トートにメロメロになりたいのです。
誘惑シーンがどうも色っぽくなくて……、トートとルドルフがガシッと抱き合ったり、あまつさえ本当に唇をあわせているようでは到底ダメ!
下から思いきり顔を寄せてキスでもすんのかって寸前で止める武田トートの思わせぶりとか、ちびルドルフを相手に淫行条例に引っかかるんじゃないかって甘い声をかける山口トートの笑顔とか、そういう危うさが必須なんです。
まずそもそも、トートとシシィの出会いから、トートが恋に落ちた感がなさすぎました。ベタに二度見するような演技でもいいです!(たしか武田トートはそうしていたはず)
トートもトートですが、シシィも全然トートを意識しているように感じられなくて、これはラブストーリーのはずなのに〜? という点がどうも気になるのでした。
最初は無邪気にトートを魅了してしまうシシィ、次はトートの執着に気づいて怯えるシシィ、怯え恐れると同時に惹かれる気持ちに気づいて愕然とするシシィ、トートに惹かれる自分を否定したい反動でトートへ怒りを向けて拒絶するシシィ、トートを気にも留めないほど充足するシシィ、しかし弱った瞬間に甘い声をかけられて揺らぐようになるシシィ、それでもその都度トートをはねつけるシシィ、その抵抗にもとうとう疲れ果てて、投げ捨てるようにトートに身を任せようとしたシシィに、今度はトートがそんなのは自分が欲しいシシィじゃないとはねつける逆転、それからようやく生き切ったシシィを優しく迎えるトート。……という順を追った深まりが、なーんかちっとも感じられませんでした。
トートがちびルドルフに後ろから遊びともつかず本気ともつかずピストルを向ける演出とか、さんざん空だと言って市民には売らなかったミルクを宮殿で売る演出とか、ちょいちょい好きなところはあったのですが。

うーん、でも、レミゼも昔の演出のが良かったーとか言ってるし、結局ただの昔は良かった……的たわごとかも。