死んだ男の話をしよう。

ちかしい人が死んだ経験に乏しくて。

今、「ちかしい」って入力したら、「親しい」って変換が出た。それじゃあ「したしい」って読むだろうよ。意味はそれだけど、ちかしいって書きたいのに、どうすんの。

ともあれ、友達が死んでぽかんとしている。だってさ、ついこの間、久しぶりに会ったんだったよね?
年に1度も会わないようなときもあって、顔を見ないのなんか当たり前の人が、死んだと聞いたって、それはまたしばらく会えていないだけなのとどう違うの?って。
そうだね、例えばSNSで話しかけたとして、永遠に返事が来ない。どこにも言葉は届かない。もしかして、向こうの回線を解約するから即座にエラーメッセージが届くようになるのかも。
大丈夫。試しに送ってみたりしないから。そんなロマンティックな未練みたいなことはしない。
いないのだ、と改めて意識に上らせる。
乏しい想像力の枠の中、薄っぺらい気もするけれどなんとなく想像した「世界」にそれまでは彼がいて、今は彼がいないのだ、と想像する。考えに自分を慣れさせる。
だけど忘れた頃に、糸を、なにげなく引いてしまうのだ。そして、その先がどこにも繋がらないことに愕然とする。
今となってはすごく直近にくれた言葉を思い出して、私の先を心配した言葉をくれたことを思いついて、何言ってんの、って八つ当たりめいた怒りを覚える。置いて行ったくせに。置いて行くための言葉みたいなの、何言ってんの。
この5月に日本に帰って来ていたので会った。違う人から飲み会に呼んでもらった。彼が帰ってきているしさ、って開催された飲み会。

だからね、帰ってくる時はちゃんと私にも教えてくださいよ。顔を見たときに声をかけたら、んー? 面倒くさいし、声かけるのどうしようかと思ってた、なんて言うから、それは最低な話だって責めた。次はちゃんと声かけてくださいね?

わかったって言ったくせに、次がないとか、もっと最低の話。
誰だっていつかいなくなるし、どこで区切るか。死で区切るなら、むしろそれは一番わかりやすくて、後腐れもないのかも?
でも、死ぬなんて知らなかった。自分でだって死ぬなんて知らなかったよね?
11月は遊びに行きますよって言ったら、いいよって言ったくせに、嘘にした。約束じゃないし、私の方が嘘にしたかもしれなかったけど、本当にしたかもしれなかったのに、もう本当には決してならない。嘘なのが確定。
もうどこにもいないの? 何か少しだけでもやり直せないの? 何か出来ないの? 何も出来ないの?
勝手に、突然、ただ居なくなるなんて、じゃあどうしたらいいの? 何もないの?
悔しくて。時間は不可逆なことがテーマの小説が、いつもすごく好きだって言ってきたし、それは撤回しない。しないけど悔しくて、ちょっと待ってよって思う。やっぱり、お願いだから待ってよ!って思うんだなってわかる。

悲しんではみても絶対にどうしようもなく何もかも立ち行かなくなったりしない。だれが死んだっていなくなったって平気だし大丈夫。
でも、やっぱり悔しいよ。